「デルパラグループ代表、山本昌範こと李昌範容疑者を逮捕」。このニュース速報に、多くの人が「一体何者なんだ?」と首をかしげたのではないでしょうか。年商900億円企業トップによる大規模な選挙買収という衝撃的な事件ですが、人々の関心は容疑者の持つ二つの名前と、その国籍に集まっているようです。
しかし、一度立ち止まって考えてみましょう。この事件の本質は、単なる一個人の犯罪なのでしょうか。元新聞記者としての私の目には、この出来事が戦後日本の社会構造、特にパチンコ業界と在日韓国人社会が抱える複雑な歴史の歪みを映し出す、象徴的な事件のように見えてなりません。この記事では、表面的な事実の羅列に終わらず、その背後にある構造的な問題を冷静に解き明かしていきます。
「山本昌範って誰?」と困惑するあなたへ – 韓国籍李昌範の実像と通名使用の背景
まずは事実関係を整理しましょう。今回、公職選挙法違反(買収)の容疑で逮捕されたのは、韓国籍の李昌範(リ・チャンボン)容疑者(50)です。しかし、彼は社会的には「山本昌範」という日本名、いわゆる通名で活動していました。パチンコ店運営会社「デルパラ」の代表取締役社長であり、年商900億円規模の企業を率いる敏腕実業家。その人物がなぜ、このような事件を起こしたのでしょうか。
この事件を理解する上で最初の鍵となるのが、「通名」の存在と、パチンコ業界の特殊な成り立ちです。これらは決して無関係ではなく、深く絡み合っています。
年商900億円企業を一代で築いた韓国系実業家
李容疑者が率いるデルパラグループは、鳥取県米子市で創業し、現在は東京・六本木に本社を構えています。1都7県に31店舗を展開し、従業員数は500人以上、グループ全体の売上高は約900億円に上ります。まさに一代で巨大企業を築き上げた、立志伝中の人物と言えるでしょう。
しかし、これほどの成功を収めた経営者が、なぜ従業員250人を巻き込む大規模な選挙買収という、あまりにリスクの高い禁じ手に手を出してしまったのか。この疑問こそが、事件の本質に迫る入り口となります。その背景には、単なる個人の野心だけでは説明できない、業界全体が抱える構造的な焦りが見え隠れします。
なぜ「山本昌範」という通名を選んだのか
そもそも日本では、外国人が社会生活を円滑に送るために通名を使用することが法的に認められています。李容疑者が「山本昌範」と名乗っていたのも、この制度に則ったものです。公式サイトでも「代表取締役 山本昌範」と表記されており、ビジネス上の正式名称として使用されていたことがわかります。
ここで重要なのは、なぜ「山本」だったのか、という点です。実は「山本」や「新井」「金本」といった姓は、在日韓国人社会で多く選ばれる通名の一つです。特に「李」姓を持つ人が「木」と「山」に分解できる「山本」を選ぶのは、典型的なパターンとされています。これは単なる語呂合わせではなく、日本社会への適応とビジネス上の利便性を追求した、極めて実用的な選択だったと考えるべきでしょう。
実は「パチンコ業界の8割が在日系」という驚きの業界構造
この事件を読み解く上で避けて通れないのが、パチンコ業界の成り立ちです。実は、パチンコホールの経営者のうち、7割から8割が在日韓国・朝鮮系の資本であると言われています。これは、業界関係者の間では半ば常識とされている数字です。
これは陰謀論の類ではなく、戦後の混乱期という特殊な社会状況から生まれた、歴史的な必然でした。山本昌範こと李昌範が何者かを知ることは、このパチンコ業界と在日社会の切っても切れない関係性を理解することに他なりません。
戦後復興期に形成された在日韓国人とパチンコの深い関係
なぜ、これほどまでに在日系の比率が高まったのか。時計の針を戦後復興期まで戻す必要があります。1950年代、パチンコブームが一度終焉を迎えた際、多くの日本人業者が廃業しました。しかし、当時はまだ根強い民族差別があり、他の職に就くことが困難だった在日韓国・朝鮮人の人々は、この業界に留まり続けました。
職業選択の自由が著しく制限され、「パチンコ、ホルモン屋、性風俗」といった限られた選択肢の中で、彼らは生きる道を見出さざるを得なかったのです。結果として、パチンコ業界における在日系の占有率は急速に高まっていきました。李容疑者のデルパラグループも、こうした大きな歴史の流れの中に位置づけることができます。
李昌範が選んだ「山本」姓の秘密
前述した通名の話に戻りましょう。李容疑者が「山本」を選んだ背景には、こうした業界の歴史があります。同業者やコミュニティの中に同じようなルーツを持つ人々が多く存在する環境で、元の姓との関連性を持ちつつ、日本社会で違和感のない「山本」という姓を選ぶのは、ごく自然な判断だったと言えます。それは、社会に溶け込むための知恵であり、一種の処世術だったのかもしれません。
韓国との具体的関係は「限定的」だが業界の歴史的背景を知る重要性
キーワードとして「韓国との関係」が注目されていますが、現時点での報道を見る限り、李昌範容疑者個人やデルパラグループが、韓国本国の政治や経済と直接的かつ組織的に深い関係を持っていたという事実は確認されていません。取引銀行に韓国系のSBJ銀行が含まれているものの、これは多くの在日系企業に見られる取引パターンであり、特筆すべきことではありません。
ここで重要なのは、本国との直接的なパイプの有無ではなく、彼らが日本社会の中で「在日韓国人経営者」として、どのようなビジネスモデルを築き、どのようなコミュニティを形成してきたかという歴史的文脈です。その視点なくして、この事件の本質は見えてきません。
在日韓国人経営者の典型的なビジネスモデル
パチンコ業界における在日韓国人経営者は、同郷のネットワークや民族団体などを通じて、経営ノウハウや情報を共有し、事業を拡大してきました。これは、差別的な環境下で生き抜くための、いわば相互扶助のシステムでした。李容疑者の事業拡大の過程も、こうした在日コミュニティのビジネスモデルと無縁ではなかったはずです。
本国韓国との経済的・政治的つながりの実態
繰り返しになりますが、在日企業の多くは、その事業基盤を日本国内に置いています。もちろん個々の企業や経営者レベルでの本国とのつながりは様々でしょうが、パチンコ業界全体として韓国政府と組織的な関係があるわけではありません。今回の事件を、短絡的に国家間の問題と結びつけて見るのは、本質を見誤る危険な視点だと私は考えます。
250人を巻き込んだ「史上最大級選挙買収事件」の全貌
この事件の異様さは、その規模にあります。李容疑者を含む幹部6人が逮捕され、対象となった従業員は約250人。「残業代」と称して1人3000円~4000円の報酬を約束し、組織的に票の取りまとめを行っていました。警視庁と7県警による250人体制の合同捜査本部が設置されたことからも、事件の重大さがうかがえます。
これは平成以降の国政選挙において、検挙人数が最大級になる見通しです。一企業の選挙違反としては、まさに前代未聞の規模と言えるでしょう。
1都7県31店舗を使った組織的な票の取りまとめ
犯行は極めて計画的でした。李容疑者がウェブ会議で全体指示を出し、各店舗の責任者が従業員に伝達。投票した証拠として、特定の候補者名を書いた投票用紙の写真をLINEで報告させていたというのですから、その用意周到さには呆れるほかありません。企業の統治システムを、そのまま選挙違反に悪用した構図です。
パチンコ業界の政治的野心が招いた転落
では、なぜこれほどの大規模な買収に手を染めたのか。その動機は、彼らが支援した候補者の経歴に集約されています。立候補した阿部恭久氏は、業界団体である全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)の理事長でした。つまり、業界初の組織内候補を国会に送り込むことで、業界の地位向上や、カジノ解禁などで厳しくなる一方の規制を緩和させたいという、明確な政治的野心があったのです。
年商900億円企業を築き上げた成功体験が、「金と組織を使えば政治も動かせる」という歪んだ万能感を生んでしまったのでしょうか。いずれにせよ、その野心が自らを転落させる結果となったのは、何とも皮肉な結末です。
よくある質問と回答
Q. 結局、李昌範(山本昌範)とは何者だったのですか?
A. 一言で言えば、戦後日本の特殊な社会環境が生んだ「光と影」を体現した人物です。在日韓国人というハンディキャップを乗り越え、年商900億円企業を築いた敏腕実業家という「光」の側面と、その成功を守るために業界の論理を優先し、大規模な選挙違反に手を染めた「影」の側面を併せ持っています。
Q. なぜ通名を使う必要があるのでしょうか?
A. 法的に認められた権利であり、第一には日本社会でビジネスや生活を円滑に進めるための実用的な理由があります。しかしその背景には、いまだ社会に根強く残る差別や偏見を避けたいという、より切実な動機が存在することも否定できません。
Q. この事件はパチンコ業界全体の問題と言えるのでしょうか?
A. あくまでデルパラという一企業の犯罪であり、業界全体を同罪と見るべきではありません。しかし、業界が政治的な影響力を渇望する背景には、カジノの登場やギャンブル依存症対策による規制強化など、共通の経営危機が存在します。その意味で、この事件は業界が抱える構造的な問題を象徴していると言えるでしょう。
まとめと今後の展望
本稿で論じてきたように、山本昌範こと李昌範容疑者の逮捕という事件は、単なる選挙違反として片付けられるものではありません。その根底には、通名という制度、戦後から続く在日韓国人社会の歴史、そしてパチンコという巨大産業が日本社会の中で置かれてきた特殊な立ち位置が、複雑に絡み合っています。
表面的な事象に目を奪われ、特定の個人や国籍を非難するだけでは、何も解決しません。重要なのは、この事件をきっかけに、我々の社会が内包する構造的な問題を直視し、その歴史的背景を冷静に理解しようと努めることです。この問いを、読者の皆さんと共に考え続けるきっかけになれば幸いです。
参考文献
- Yahoo!ニュース:【速報】公職選挙法違反の疑い パチンコ店運営会社の代表ら6人逮捕 (出典)
- 東京大学:パチンコ産業と在日韓国朝鮮人企業 (出典)
- 在日韓人歴史資料館:在日コリアンとパチンコ業 (出典)
- Wikipedia:通名 (出典)
- アゴラ:パチンコ産業にはなぜ在日資本が多いのか、という話 (出典)
- 毎日新聞:「投票すれば報酬」約束か 公選法違反容疑でパチンコ会社社長ら逮捕 (出典)


