2025年12月24日、神戸地検は、兵庫県議への名誉毀損や脅迫などの疑いで書類送検されていた政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首(58)を、不起訴処分にしたと発表しました。
昨秋(2024年)の兵庫県知事選をめぐり、SNSでの発言や自宅前での街宣活動が「脅迫」や「業務妨害」にあたるとして捜査されていましたが、検察は「刑事責任を問うのは難しい」と判断しました。
本記事では、なぜ今回は「嫌疑不十分」となったのかその法的な背景と、立花氏が抱える「もう一つの事件(在宅起訴済み)」を含めた今後の動向について、事実に基づき解説します。
何が起きたのか:12月24日の決定までの経緯
まずは、今回不起訴となった事件の時系列を整理します。対象となっていたのは、兵庫県議会の百条委員会で委員長を務めていた奥谷謙一県議に対する行為でした。
- 2024年11月(昨秋):兵庫県知事選の期間中、立花氏は奥谷県議の自宅兼事務所前などで演説を行い、SNSでも批判を展開。
- 2025年6月:兵庫県警が以下の容疑で立花氏を神戸地検に書類送検。
- 名誉毀損:SNSでの投稿による。
- 脅迫:「家から出てこい」等の発言が該当するか。
- 威力業務妨害:平穏な生活や業務を害した疑い。
- 2025年12月24日:神戸地検が「嫌疑不十分」として不起訴処分を決定。
- 同時に、支援者らによる別の暴行容疑(街頭演説中のトラブル)については「起訴猶予」となった。
詳細:なぜ「嫌疑不十分」だったのか?
検察は詳細な理由を明らかにしていませんが、一般論および法的な観点から、以下のハードルがあったと考えられます。
1. 「政治家への批判」と表現の自由
名誉毀損罪において、相手が「公人(政治家)」であり、発言内容が「公共の利害」に関わる場合、事実であれば(あるいは真実と信じる相当の理由があれば)罰せられないという特例があります。
立花氏の言動は過激でしたが、知事選という公的なプロセスにおける政治主張の一環とみなされ、「悪意ある虚偽」とまで認定する証拠が足りなかった可能性があります。
2. 「脅迫」の成立要件の厳しさ
刑法上の「脅迫罪」が成立するには、生命、身体、自由、名誉または財産に対し、具体的に害を加える旨を告知する必要があります。
「これ以上嘘をつくな」「家に行って街宣するぞ」といった強い圧力であっても、法的な意味での「害悪の告知(殺す、殴るなど)」には当たらないと判断された可能性が高いです。
3. 選挙活動という特殊性
事件当時の行為は、選挙運動期間中に行われたものが含まれます。民主主義社会において選挙活動は最大限尊重されるべきものであり、検察としても「政治活動を刑事罰で縛ること」に対して慎重になった(有罪判決を勝ち取るのが難しいと判断した)側面があります。
今後どうなる?「完全な自由」ではない理由
今回の件は不起訴となりましたが、立花氏を取り巻く状況は決して「解決」したわけではありません。
1. 検察審査会と民事訴訟
不起訴処分を受け、被害を訴えていた奥谷県議は以下の対応を示唆しています。
- 検察審査会への申立て:市民から選ばれた審査員に「不起訴が妥当か」の再審査を求める。
- 民事訴訟:刑事では無罪放免でも、民事上の「不法行為」として損害賠償を請求する予定。
2. 【重要】別件では「起訴」されている
これが最も重要ですが、立花氏は別の事件ですでに起訴(裁判にかけられることが確定)されています。
- 被害者:亡くなった竹内英明・元県議
- 容疑:名誉毀損(死者の名誉毀損を含む)
- 状況:2025年11月に逮捕・起訴済み。
つまり、今回の奥谷県議の件はセーフでしたが、「元県議へのデマ拡散」に関する裁判はこれから始まるため、法的リスクは依然として高い状態が続きます。
まとめ
- 神戸地検は、奥谷県議への名誉毀損・脅迫容疑について立花孝志氏を不起訴(嫌疑不十分)とした。
- 理由は、政治活動における表現の自由や、脅迫の構成要件を満たす証拠が不十分だったためと推測される。
- 奥谷県議側は民事訴訟や検察審査会への申し立てを行う意向。
- 立花氏はこれとは別に、亡くなった元県議への名誉毀損罪で起訴されており、そちらの刑事裁判は継続する。
「政治家の表現」と「個人の権利侵害」の境界線が問われた今回の処分。不起訴=完全なシロというわけではなく、舞台は民事法廷や別の刑事裁判へと移ることになります。


