「警察手帳や逮捕状をスマホの画面で見せることは絶対にありません」
警察庁の公式X(旧Twitter)が発信したこの強い警告が、今ネット上で大きな注目を集めています。これは、近年急増している「SNS型投資・ロマンス詐欺」や「ニセ警察官詐欺」への対策として出されたものです。
なぜ今、このような警告が必要なのか。元IT技術者の視点から、デジタルツールを悪用した詐欺の手口と、偽物の見抜き方を徹底解説します。
何が起きたのか(警察庁の警告内容)
警察庁は公式アカウントで、本物の警察官なら「絶対にしない3つの行動」を挙げ、これらに遭遇したら即座に詐欺と判断するよう呼びかけました。
- 警察手帳や逮捕状の画像を送ることはない:LINEやメールで「証拠」として画像を送ることはあり得ません。
- 個人のスマホに突然ビデオ通話はしない:取調べや事情聴取をビデオ通話で行うことはありません。
- メッセージアプリ(LINE等)で連絡しない:公務で個人のSNSアカウントを使用することはありません。
詳細・事実関係(ニセ警察官の手口)
では、具体的にどのような手口で被害者を騙すのでしょうか。現在確認されている典型的なパターンは以下の通りです。
1. 「あなたに逮捕状が出ている」という脅し
最初は自動音声電話や、SNSのDMなどで接触してきます。「あなたの口座がマネーロンダリング(資金洗浄)に使われた」「詐欺グループの犯人があなた名義のカードを持っていた」などと、犯罪の容疑者になっていると告げ、パニック状態に陥らせます。
2. ビデオ通話での「視覚的」な騙し
ここがデジタル時代の新しい手口です。「潔白を証明するために捜査に協力してほしい」と言い、LINEなどのビデオ通話へ誘導します。
画面の向こうには、警察官の制服を着た人物が映っており、カメラに向かって警察手帳や逮捕状のような書類を提示します。これにより、被害者は「本物の警察だ」と信じ込んでしまいます。
3. 「資金調査」名目の送金要求
「あなたの資産が汚れた金かどうか調べる必要がある」「一旦安全な口座(警察が管理する口座)に移す必要がある」などと言い、指定口座への送金や、ネットバンキングのID・パスワードの入力を迫ります。
【元技術者が解説】なぜ「ビデオ通話」なのか?
ここからは、ITの側面からこの手口の悪質さを解説します。なぜ詐欺グループはわざわざリスクを冒して「顔出し(または変装)」のビデオ通話を行うのでしょうか。
デジタル画像は「証拠能力ゼロ」
プログラマーの視点で見れば、警察手帳や逮捕状の画像を偽造することは、小学生の工作レベルの難易度です。
- 画像編集:Photoshopなどのソフトを使えば、本物らしい「逮捕状」の画像にあなたの名前を入れるのは数分で完了します。
- 制服と手帳:ネット通販で「コスプレ用」として数千円で入手可能です。画質の荒いビデオ通話越しでは、本物かどうかの細部(質感やホログラムなど)を確認することは不可能です。
つまり、スマホの画面越しに見せられる「公的書類」は、デジタルデータである以上、何の信用性もないと考えてください。
「権威性」のハッキング
人間は「制服」や「手帳」といった権威の象徴を見ると、思考停止に陥りやすい心理的脆弱性(セキュリティホール)を持っています。ビデオ通話という「ライブ感」のある演出を加えることで、この心理的なバグを突き、正常な判断力を奪うのが狙いです。
もし「ニセ警察官」から連絡が来たら?
万が一、このような連絡が来た場合は、以下の行動を徹底してください。
- 即・切断:相手が何を言おうと、通話を切ってください。「公務執行妨害になる」と脅されても、そもそも相手は公務員ではないので無視して構いません。
- かけ直さない:着信履歴の番号には絶対にかけ直さないでください。表示されている番号が偽装されている可能性があります。
- 「#9110」へ相談:110番するほど緊急か迷う場合は、警察相談専用電話「#9110」へかけてください。
- 最寄りの警察署へ確認:どうしても不安な場合は、ネットで地元の警察署の電話番号を調べ、自分からかけて「〇〇という刑事から電話があったが事実か」と確認してください。
まとめ
本物の警察は、重要事項を伝えるためにわざわざLINEやビデオ通話などを使いません。「スマホの画面越しに警察手帳を見せられたら100%詐欺」。この知識をインストールし、自分だけでなく家族(特に高齢者)にも共有してください。
以下の動画は、実際のニセ警察官詐欺の手口を再現・解説しているニュース映像です。犯人がどのようにビデオ通話で圧力をかけてくるか、具体的なイメージを持つために非常に役立ちます。
この動画では、ビデオ通話で警察官を装う犯人がどのように振る舞うか、実際の映像とともに専門家が解説しており、手口のリアリティを理解するのに最適です。


