ウィル・スミスとベン・ロートベットの併用・起用法を解説!ドジャース新戦術の狙い

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スポーツ

ロサンゼルス・ドジャースの捕手起用が、ファンの間で大きな議論を呼んでいます。打撃のウィル・スミスと、守備のベン・ロートベット。なぜチームはシーズン終盤、そしてポストシーズンという大舞台で2人の捕手を併用する戦略に踏み切ったのでしょうか。

多くの人は選手の好不調や相性といったミクロな視点で語りがちですが、問題の本質はもっと深い場所にあるのかもしれません。この記事では、元新聞記者の視点から、その背後に隠された現代野球の戦術的進化と、ドジャースという球団の経済合理性までを読み解いていきます。

なぜドジャースは2人の正捕手を使い分けるのか?プロが教える現代野球の新戦術

一見すると不可解なこの捕手併用策。しかし、その背景には「打撃力」と「投手力を最大化する配球力」という、現代野球において両立が難しい2つの要素を、チーム全体で最適化しようという明確な意図が見て取れます。

ウィル・スミスの打撃力 vs ベン・ロートベットの配球力

まず事実として、両者の選手としての特性は対照的です。ウィル・スミスは、2025年シーズン128試合で打率.296、OPS.901を記録した球界屈指の「打てる捕手」。その価値は10年総額1億4000万ドルという、捕手史上3番目の大型契約が雄弁に物語っています。

一方で、7月末にトレードで加入したベン・ロートベットの打撃成績は控えめです。しかし、彼の真価は守備、特に配球面にありました。驚くべきことに、彼が正捕手に定着した9月6日以降、ドジャースの先発投手陣は24試合で防御率1.64という驚異的な数字を叩き出したのです。これは単なる偶然では片付けられない、明確な「差」と言えるでしょう。

「先発ロートベット+途中スミス投入」戦術の仕組み

この二人の強みを最大限に活かすためにドジャースが編み出したのが、「先発はロートベット、試合中盤以降に代打でスミスを投入し、そのままマスクを被らせる」という起用法です。これにより、序盤はロートベットの配球力で試合を落ち着かせ、勝負どころの攻撃でスミスの打棒に期待するという、いわば「二段階ロケット」のような戦術が可能になりました。

しかし、一度立ち止まって考えてみましょう。これは、高額契約を結んだスター選手であるスミスが、自身の役割の変化を受け入れているからこそ成り立つ戦術です。ロバーツ監督が「彼が完全に問題ないと言うなら、スタメンから外すのは難しい」と語るように、この起用法の裏には、チームの勝利という大義の前での個人の献身という、組織論的なテーマも隠されているのです。

【データで証明】大谷翔平・山本由伸が輝く理由は捕手にあった

特にこの捕手併用策の恩恵を大きく受けたのが、大谷翔平と山本由伸という2人の日本人投手でした。ロートベットとのバッテリーは、彼らのポテンシャルを最大限に引き出す起爆剤となったのです。

ロートベット起用後の先発陣防御率が劇的改善した数字

数字は嘘をつきません。ロートベットが先発マスクを被った試合で、ドジャース先発陣の防御率は1.64。山本由伸は彼とのバッテリーで9回2死までノーヒットノーランを演じ、大谷翔平は自己最速の101.7マイルを記録しながら5回無安打無失点と圧巻の投球を見せました。チームも18勝6敗と快進撃を続け、このコンビがいかに機能していたかを証明しています。

元新聞記者として様々な現場を見てきましたが、一人の選手が加入しただけで、チーム全体のパフォーマンスがこれほど劇的に改善する例は稀です。これは、ロートベットという存在が、投手陣に与えた技術的、そして心理的な影響がいかに大きかったかを示唆しています。

英語でのコミュニケーションが生む信頼関係

なぜ、これほどの化学反応が起きたのか。大谷翔平選手が「英語でのコミュニケーションもすごくスムーズ」と語るように、ロートベットの強みは投手との対話能力にありました。「まずは一番良い球でストライクゾーンを早いカウントから埋める」という彼の配球哲学は、投手主導で組み立てたい大谷・山本両投手と見事に合致したのです。

ブルペンと試合での投球の違いを即座に理解し、一人ひとりの強みに合わせてリードを組み立てる。これは単なる「壁」としての捕手ではなく、投手の能力を最大限に引き出す「パートナー」としての役割です。言語の壁を越えたこの信頼関係こそが、驚異的な数字の源泉だったと言えるでしょう。

実は苦労人だった救世主ロートベット〜戦力外から1ヶ月で正捕手へ

シーズン終盤の救世主となったロートベットですが、彼のキャリアは決して順風満帆なものではありませんでした。彼の軌跡は、メジャーリーグという厳しい競争社会における選手の流動性と、専門特化による生存戦略を象徴しています。

ツインズ→ヤンキース→レイズ→ドジャースの波乱万丈キャリア

2016年にドラフト2巡目でプロ入りしたものの、ツインズ、ヤンキース、レイズと球団を渡り歩き、故障や不振に苦しむ日々。2025年5月にはレイズからDFA(事実上の戦力外通告)を受けるなど、彼のキャリアは崖っぷちに立たされていました。

こうした選手の経歴を追うと、プロスポーツの世界がいかに残酷で、同時にチャンスに満ちているかがわかります。彼がもし守備力という一点を磨き続けていなければ、ドジャースからのオファーはなかったかもしれません。

トレード期限ギリギリの加入から這い上がった28歳の執念

ドジャースへの移籍も、7月31日のトレード期限ギリギリに成立した3球団が絡む複雑なものでした。当初は第3捕手という立場でしたが、9月のスミスの負傷という好機を逃さず、メジャー契約を勝ち取ります。そしてデビューからわずか5試合で2度のノーヒッター未遂を演出するなど、瞬く間に投手陣の信頼を勝ち得ました。

メジャー最低保証年俸レベルで契約した選手が、1億ドルプレーヤーの定位置を脅かす。この事実は、単なるサクセスストーリーとしてだけでなく、チームの戦力を最大化するための「費用対効果」という経済的な視点からも非常に興味深い事例です。ドジャースは、彼の守備力という「資産」を極めて安価な「コスト」で手に入れたのです。

【プレーオフ検証】スミス復帰で山本炎上は偶然?配球の違いを徹底分析

しかし、ポストシーズンという短期決戦の舞台で、このウィル・スミスベン・ロートベット併用起用法は新たな局面を迎えます。スミスの復帰戦で山本由伸が打ち込まれたことで、ファンの間では再び配球面での議論が巻き起こりました。

ファンが指摘する「スミスの2ストライク後ストレート要求問題」

プレーオフ第3戦、右手骨折から復帰したスミスが先発マスクを被ると、山本由伸は5回途中3失点で降板。SNSやネット掲示板では「スミスは2ストライク後にストレートを要求しすぎる」「山本との相性が悪い」といった指摘が噴出しました。

これは単なる印象論なのでしょうか。確かに、結果だけを見ればその批判は当たっているように見えます。しかし、短期決戦のプレッシャーの中で、相手打者も必死に研究してくることを忘れてはなりません。一つの敗戦を捕手一人の責任に帰するのは、あまりに短絡的ではないでしょうか。

ロートベット vs スミス、数字で見る配球スタイルの違い

両者の配球スタイルには明確な違いがあります。ロートベットが「良い球で積極的にストライクゾーンを攻める」投手主導のスタイルであるのに対し、スミスは打者の反応を見ながら組み立てる傾向があると言われます。どちらが優れているという話ではなく、これはスタイルの違いです。

重要なのは、そのスタイルが投手と噛み合うかどうか、そして試合状況に応じて最適な選択ができるかどうかです。今回の炎上は、結果としてスミスのリードに疑問符を付けましたが、同時にポストシーズンという舞台で配球戦略を一本化することの難しさを浮き彫りにしたとも言えるでしょう。

読者も納得!ドジャース監督が語る理想的な捕手併用法

では、チームを率いるロバーツ監督は、この複雑なパズルをどのように解こうとしているのでしょうか。彼の判断基準は、極めて合理的かつ戦略的です。

相手投手・試合状況で使い分ける3つの基準

監督の起用法は、主に以下の3つの基準に基づいていると考えられます。

  • 先発投手との相性:大谷・山本といった投手主導でリズムを作りたい投手には、コミュニケーション能力の高いロートベットを優先。
  • 試合状況とイニング戦略:序盤は守備重視でロートベット、打力が欲しい中盤以降にスミスを代打投入するというパターンを基本線とする。
  • 選手のコンディションと相手の特徴:スミスの怪我の状態や、打力で圧倒したい相手左腕投手など、その時々の状況で柔軟に判断する。

これは、もはや「正捕手」という概念そのものを過去のものにする試みです。固定されたレギュラーではなく、状況に応じて最適なピースを組み合わせる。現代野球の戦術が、個の力から組織の力へと移行していることを示す象徴的な事例です。

他球団も真似したい「二刀流キャッチャー戦術」の未来

ドジャースが示すこの「捕手二刀流」とも言える戦術は、今後の球界に大きな影響を与える可能性があります。投手の分業制が当たり前になったように、捕手にも役割分担の波が来るのかもしれません。

しかし、この戦術が成功している背景には、スミスというスター選手が役割を受け入れていること、そして彼の高年俸を許容できるドジャースの潤沢な資金力があることも見逃せません。これは、全ての球団が簡単に模倣できる戦略ではないのです。このウィル・スミスベン・ロートベット併用という起用法は、ドジャースの強さを支える新たな武器として、今後も注目され続けるでしょう。

よくある質問と回答

Q. 結局、ドジャースの正捕手はスミスとロートベットのどちらなのですか?

A. 「固定された一人の正捕手」という考え方ではなく、状況に応じて役割を分担する「ダブル正捕手」体制と捉えるのが適切です。試合序盤の投手力重視の場面ではロートベット、試合を決める打力が欲しい場面ではスミス、というように役割が明確に分かれています。

Q. なぜロートベットは特に大谷選手や山本投手と相性が良いのでしょうか?

A. 彼の「まず投手のベストボールでストライクを取る」という投手主導の配球哲学と、緻密なコントロールを生命線とする日本人投手のスタイルが合致しているためです。また、丁寧なコミュニケーションで信頼関係を築き、投手の能力を最大限引き出すことに長けている点も大きいでしょう。

Q. この捕手の併用策は、他のMLB球団も真似できる戦術ですか?

A. 簡単ではありません。この戦術は、①専門性の高い2人の捕手がいること、②高額契約のスター選手(スミス)が役割を受け入れる理解力があること、③そのスター選手をベンチに置けるドジャースの豊富な資金力があること、という3つの条件が揃って初めて成立します。

まとめ

本稿で論じてきたように、ドジャースの捕手併用問題は、単なる選手起用の話にとどまりません。それは、現代野球における分業制の深化、選手の価値を最大化する経済合理性、そしてチームの勝利のために個がどうあるべきかという組織論までを内包した、非常に示唆に富んだケーススタディなのです。

表面的な結果に一喜一憂するだけでは、この戦略の本質を見誤るでしょう。重要なのは、この変化の兆候から何を学び、未来のチーム作りや野球観にどう活かしていくかです。この問いを、読者の皆さんと共に考え続けるきっかけになれば幸いです。

参考文献

  • MLB.com日本語版:【賛否比較】ドジャースはスミスを復帰させるべきか? (出典)
  • MLB.com日本語版:ウィル・スミス、右手の亀裂骨折でポストシーズン出場に黄信号 (出典)
  • スポーツニッポン:大谷翔平と初バッテリーで「違いを実感」した出来事は… (出典)
  • J SPORTS:打撃のウィル・スミスとリードのベン・ロートベッド、ドジャースはどちらをスタメン捕手にするのか? (出典)
  • 日刊スポーツ:ドジャース3球団6人が絡む大型トレード成立 (出典)
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