名古屋大学で発生した爆発事故に関連し、原因物質として「テトラクロロシラン(四塩化ケイ素)」という聞き慣れない化学物質の名前が注目を集めています。
「実験中に爆発した」と報じられていますが、そもそもこの液体はどのような性質を持ち、なぜ爆発に至るのでしょうか。
今回は、化学知識がない方にも分かるように、テトラクロロシランの危険性と、爆発が起きる科学的なメカニズムを整理しました。
何が起きたのか(事故の背景)
現在報じられている情報および、この物質が話題になっている背景は以下の通りです。
- 場所:名古屋大学の研究施設
- 状況:実験室または関連施設での爆発・破損事故
- 注目されている物質:テトラクロロシラン(四塩化ケイ素)
- 被害状況:詳細な負傷の程度や規模については、公式発表を待つ必要がありますが、一般的にこの物質による事故は「化学熱傷」や「吸入による呼吸器損傷」のリスクを伴います。
注意:
インターネット上では様々な情報が錯綜しています。事故の正確な原因(人為的ミスか、機器の故障か)については、大学や警察・消防の最終的な調査結果を確認してください。
「テトラクロロシラン」とは何か?
テトラクロロシラン(別名:四塩化ケイ素、化学式:SiCl₄)は、半導体産業や化学実験で広く使われている物質です。
- 見た目:無色の液体(水のように見える)
- 特徴:空気に触れると白く煙を上げる(発煙性)
- 主な用途:
- 半導体のシリコンウエハーの原料
- 光ファイバーの製造
- 高純度シリコンの製造
私たちのスマートフォンやPCに使われている半導体を作る上で欠かせない、非常に重要な「産業の米」の原料と言えますが、取り扱いを間違えると凶器になります。
なぜ爆発したのか?(爆発の仕組み)
テトラクロロシラン自体は、火薬のように「火をつけてドカン」と爆発するものではありません。最大の危険性は「水」との反応にあります。
1. 水に触れると劇的に反応する(加水分解)
この液体は、水(または空気中の湿気)に触れた瞬間、激しく反応して分解します。
- 反応式:SiCl₄ 水(H₂O) → 二酸化ケイ素(ガラスの成分)塩化水素(HCl) + 熱
2. 密閉容器内での「破裂」
爆発事故が起きる典型的なパターンは以下の通りです。
- 廃液タンクや容器の中に、わずかに「水分」が残っていた、あるいは誤って水系の物質を混ぜてしまった。
- テトラクロロシランを入れた瞬間、急激な化学反応が起きる。
- 反応により、液体が気体(塩化水素ガス)に変わり、体積が一気に数百倍以上に膨れ上がる。
- 同時に発生する「反応熱」でさらに膨張が加速する。
- 逃げ場を失った圧力により、容器や装置が耐えきれず「破裂(爆発)」する。
つまり、火災による爆発というよりは、「急激なガス発生による圧力爆発」である可能性が高いと考えられます。
人体への危険性:塩酸の霧
爆発そのものによる物理的な衝撃も危険ですが、その後発生する「白い煙」も極めて有害です。
- 正体は「塩酸」:反応で発生する塩化水素ガスは、空気中の水分と混ざると「塩酸のミスト(霧)」になります。
- 吸入リスク:吸い込むと喉や肺が焼けるような激痛走り、最悪の場合、肺水腫を引き起こします。
- 皮膚への付着:皮膚に触れると重度の化学熱傷(やけど)を負います。
まとめ
今回の事故に関連して注目されている「テトラクロロシラン」についてまとめます。
- 半導体製造などに不可欠な液体だが、水と接触厳禁の物質である。
- 爆発の主な原因は、水分との反応による急激なガス発生と圧力上昇であるケースが多い。
- 発生するガス(塩化水素)は有毒であり、爆発後の二次被害にも注意が必要。
大学の研究室では多種多様な危険な薬品が扱われています。今後、大学側から発表される再発防止策や詳細な事故原因の究明が待たれます。

