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救急車内での写真撮影はなぜ起こる?禁止の理由と法的リスク、SNS投稿の心理

近年、SNS(InstagramのストーリーズやTikTokなど)において、救急車の車内から撮影された写真や動画を目にする機会が増えています。

点滴を受けている自身の腕や、搬送中の車内の様子を投稿する行為に対し、インターネット上では「非常識だ」「隊員の迷惑になる」といった批判の声が多く上がっています。緊急事態であるはずの車内で、なぜ撮影という行為が行われるのでしょうか。

この記事では、救急車内での撮影が横行する背景にある心理、消防庁や自治体が警告する具体的なリスク、そして法的な問題点について、事実に基づき冷静に解説します。

救急車内で「何が」起きているのか

まずは、現在問題視されている具体的な行為と、それに対する現場の状況を整理します。

なぜ緊急時に撮影してしまうのか?(心理的背景)

「そもそも撮影している場合ではないはず」という一般常識とは裏腹に、当事者がスマートフォンを向けてしまう背景には、現代特有の心理が働いています。

1. 「カマチョ」心理と承認欲求

最も多い理由の一つが、いわゆる「構ってちゃん(カマチョ)」心理です。自分が弱っている姿や非日常的なトラブルをSNSで発信することで、「大丈夫?」「心配したよ」という他者からの反応(承認)を得て安心したいという欲求が働きます。

2. ライフログ(記録)としての感覚

Z世代を中心に、食事からトラブルまで生活の全てをデジタル記録(ライフログ)として残す習慣が定着しています。「救急車に乗る=滅多にないレアな体験」と捉え、無意識にカメラを起動してしまうケースです。

3. 報告の効率化(という誤解)

家族や親しい友人に現状を伝える際、「文字を打つより写真を見せた方が早い」と判断してしまうパターンです。しかし、これは緊急車両内という特殊環境への配慮が欠けた行動と言わざるを得ません。

救急車内での撮影が「禁止」される明確な理由

多くの自治体や消防局(岡山市消防局、川口市消防局など)は、ポスターや動画で「救急車は映えスポットではありません」と明確に撮影禁止を呼びかけています。その理由は単なるマナーの問題に留まりません。

1. 救命活動の妨害(最優先事項)

救急隊員は、搬送中も患者のバイタル確認、病院への連絡、応急処置など、一刻を争う業務を行っています。撮影行為は隊員の集中力を削ぐだけでなく、フラッシュや撮影動作自体が物理的な処置の妨げになる可能性があります。

2. プライバシー権と肖像権の侵害

救急隊員にも肖像権があります。無断で隊員の顔を撮影し、SNSにアップロードする行為は肖像権侵害に該当するリスクがあります。また、搬送されている本人にとっても、弱っている姿が「デジタルタトゥー」として半永久的にネットに残ることは、将来的な不利益(就職や結婚への影響など)につながりかねません。

3. 法的リスク(公務執行妨害)

単に撮影しただけで直ちに逮捕されることは稀ですが、隊員の制止を無視して撮影を続けたり、撮影のために威圧的な態度をとって業務を妨害した場合、公務執行妨害罪(刑法95条)に問われる可能性もゼロではありません。

世間の反応・公式声明

この問題に対し、消防局などの公式機関や世間は厳しい目を向けています。

「救急隊員が患者さんを観察するときに撮影をされると、救護対応に支障が出る可能性もありますから、ぜひともやめていただきたいです」
(岡山市消防局のコメント報道より引用)

また、SNS上でも「隊員さんが可哀想」「本当に具合が悪いならスマホなんて触れないはず」といった、撮影者に対する批判的な意見が大半を占めています。

まとめ:スマホを置いて処置に協力を

救急車は「コンテンツ制作の場」ではなく、「命を守るための場所」です。

もし、自分や付き添いの人が救急車に乗ることになった場合、どれほど珍しい体験であっても、スマートフォンは鞄にしまいましょう。それが、迅速な処置と早期回復への一番の近道です。

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