こんにちは、近藤健太郎です。さて、今日はある人気漫画家と、関東地方を中心に展開するスーパーマーケットの話をします。
ただのスーパーじゃない!川尻こだま作品における「いなげや」という聖地
「なんだ、たかがスーパーの話か」と思ったあなた、ちょっと待ってください。これは、現代のSNSマーケティングと、オタク文化が生み出した新しい経済圏を読み解く、非常に興味深いケーススタディなんです。
その漫画家とは、川尻こだま先生。そしてスーパーとは、皆さんご存知の「いなげや」です。なぜ、一人のクリエイターの個人的な「好き」が、一つの企業を動かし、ファンにとっての「聖地」を生み出したのか。そのメカニズムを、一緒に紐解いていきましょう。
作品の至る所に登場する「いなげや」
川尻こだま先生は、2020年9月頃から自身のTwitter(現X)で日常を描いたエッセイ漫画の投稿を開始しました。驚くべきは、そのごく初期の段階から、当たり前のように「いなげや」の商品や店舗が作品内に登場していたことです。
なぜそこまで「いなげや」を推すの?
では、なぜこれほどまでに「いなげや」を推すのか。本人のインタビューによると、答えは驚くほどシンプルでした。「日常にあったこと、思ったことを漫画にして、何となくツイートしたらウケたから」。特にコロナ禍の自粛期間中は、毎日のように近所のいなげやに通っていたそうです。
一人のファンの愛が企業を動かした!公式コラボまでの奇跡の軌跡
個人の「好き」という熱量が、いかにして資本主義の巨人、つまり企業を動かすのか。そんな痛快な現代の物語を、時系列で追ってみましょう。
きっかけは一店舗のPOPから!驚きのシンデレラストーリー
川尻先生の漫画がファンの間で話題になる中、ついに「いなげや」の現場が動きます。ある店舗の従業員の間で漫画が話題となり、「ぜひうちの店のPOPに使わせてほしい」と、なんと店舗側から川尻先生に直接相談があったというのです。
いなげや史上初!前代未聞のコラボが実現
現場からの声に、本社も迅速に反応しました。2021年5月には、ついに川尻こだま先生と「いなげや」の正式なコラボレーションが実現します。当初は新商品の漫画紹介が中心でしたが、その反響は凄まじく、後にはサッポロビールを巻き込んだトリプルコラボへと発展するなど、今なお続く良好な関係を築いています。
即完売も?過去の激レアコラボグッズを一挙紹介!
これだけ盛り上がると、「限定グッズとかあったんでしょ?」と思うのが普通でしょう。しかし調査したところ、意外な事実が分かりました。Tシャツやキーホルダーといった、いわゆる「コラボグッズ」の販売情報は、ほとんど見つからないのです。コラボの中心は、あくまで「漫画での商品紹介」でした。
【聖地巡礼ガイド】ファンなら絶対行きたい!モデルになった店舗はどこ?
さて、ここまで話を聞くと「その聖地とやらに、ひとつ行ってみるか」と思うのが人情というものでしょう。ファンによる「聖地巡礼」も実際に行われています。しかし、ここで一つ、立ち止まって考えていただきたい点があります。
ファンの間で特定された「聖地」の場所
まず事実として、川尻先生もいなげや側も、モデルとなった店舗を公式に発表していません。漫画の描写などから、ファンの間では「立川・多摩エリアの店舗ではないか」と推測されていますが、あくまで噂の域を出ないのが現状です。
聖地巡礼するときのマナーと楽しみ方
もし皆さんが「聖地巡礼」をするのであれば、一つだけ肝に銘じてほしいことがあります。それは、あくまでそこは「スーパーマーケット」であり、買い物客や従業員の方々の日常の場である、ということです。
「好き」を発信し続けることの意味とは?こだま先生といなげやの関係から考える
最後に、この「川尻こだま×いなげや」現象が、私たちに教えてくれることは何でしょうか。私は、これは現代における「個人のエンパワーメント(力の証明)」の象徴的な出来事だと考えています。
これは何も、川尻先生だけの特殊な話ではありません。SNSでのファンの声がきっかけで「鬼滅の刃」と海苔メーカーがコラボしたり、一個人の投稿からお酒のキャンペーンが始まったりと、類例は枚挙にいとまがありません。