2026年1月25日、日本の科学技術史に残る大きなニュースが飛び込んできました。
情報通信研究機構(NICT)が、島津製作所が開発した国産の「光格子時計(ひかりこうしどけい)」を、日本標準時の決定に活用し始めたことが分かったのです。
「100億年に1秒しか狂わない」と言われるこの時計。これまでの時計と何が違うのか?なぜ日本標準時に必要なのか?
本記事では、難解な物理の話をできるだけ噛み砕き、「要するに何がすごいの?」という点をIT専門家の視点で解説します。
何が起きたのか:ニュースのポイントまとめ
まずは、今回報じられたニュースの要点を整理します。
- いつ:2026年1月(報道は1月25日)
- 誰が:国立研究開発法人「情報通信研究機構(NICT)」と「島津製作所」
- 何を:島津製作所が製品化した「光格子時計」を、日本の時刻の基準(日本標準時)を決めるシステムに組み込んだ。
- 凄さ:
- これまでの「原子時計」よりも桁違いに正確。
- 実験室の巨大な装置ではなく、企業が作った「商用機(製品)」が国の基準に使われるのは画期的。
IT専門家が解説:「光格子時計」とは何か?
ここからは、少し技術的な「仕組み」の話をします。イメージしやすいように、プログラミングやコンピュータの概念を借りて説明しますね。
1. 「原子時計」の進化版
現在、世界の時間の基準は「セシウム原子時計」というもので決まっています。これは「3000万年に1秒」しか狂いません。
しかし、「光格子時計」はさらにその上を行き、「300億年に1秒」しか狂いません。宇宙が誕生してから現在まで(約138億年)動き続けても、まだ1秒もズレていないレベルです。
2. 仕組みは「レーザーの卵パック」
なぜそんなに正確なのでしょうか?
従来の原子時計は、原子を一つ一つ飛ばして計測していましたが、これにはブレが生じます。
対して光格子時計は、「光の干渉で作った卵パック(格子)」のような空間に、原子(ストロンチウム原子)を約1000個閉じ込め、一斉に計測します。
- 従来(セシウム):一人のランナーのタイムを測る(個体差が出る)
- 光格子時計:1000人のランナーのタイムを一斉に測って平均をとる(圧倒的にブレない)
この「魔法の卵パック」のアイデアを出したのが、実は日本人の香取秀俊教授(東京大学/理化学研究所)です。つまり、日本発祥のオリジナル技術なのです。
「日本標準時の決定に活用」ってどういうこと?
ここが今回のニュースの肝です。「時計を変えた」のではなく「最強の校正役(チェッカー)を雇った」と考えると分かりやすいです。
これまでの日本標準時
日本の標準時は、たった1台の時計で決めているわけではありません。NICTにある約20台の原子時計(セシウムや水素メーザー)の平均値をとって決めています。
いわば、「そこそこ優秀な時計たち」の合議制で時間を決めていました。
これからの日本標準時
ここに、圧倒的に正確な「光格子時計」が加わります。ただし、光格子時計は超精密すぎて24時間365日動かし続けるのが難しい(メンテナンスが必要)という課題がありました。
そこで、普段はこれまでの時計たちが時間を刻み、定期的に光格子時計が「おい、ちょっとズレてるぞ」と答え合わせ(校正)をする運用になります。
これにより、日本標準時は世界協定時(UTC)に頼らずとも、自国だけで世界最高レベルの正確さを維持できるようになります。
一般人にはどんなメリットがある?
「100億年に1秒なんて、生活に関係ないでしょ?」と思うかもしれませんが、この技術は将来的に私たちの生活を大きく変える可能性があります。
1. GPSや自動運転の精度向上
カーナビやスマホのGPSは、人工衛星からの「時間のズレ」を使って位置を計算しています。時間の計測が正確になれば、現在は数メートルある誤差が、数センチ単位まで縮まる可能性があります。これは自動運転やドローン配送には不可欠な技術です。
2. 災害予知(相対性理論の活用)
アインシュタインの相対性理論では「重力が強い場所(低い場所)ほど時間はゆっくり進む」とされています。
光格子時計はあまりに正確なため、わずか1センチの高低差による時間の進みの違いすら検知できます。
これを応用すると、火山のマグマの移動による地面の僅かな隆起や、津波による海面の変化を「時間のズレ」としてリアルタイムに検知できる可能性があるのです。
まとめ
- 2026年1月、島津製作所の「光格子時計」が日本標準時の決定に使われ始めた。
- これは「300億年に1秒」しか狂わない、日本発の超・超精密時計。
- 日本は他国に頼らず、自前で世界最高の「時」を管理できるようになった。
- 将来的には、自動運転の安全確保や、火山の噴火予知などへの応用が期待されている。
日本発のアイデア(香取教授)を、日本の企業(島津製作所)が製品化し、日本のインフラ(NICT)が採用する。まさに「技術大国・日本」の復権を感じさせる明るいニュースと言えますね。


