「高級サウナが、脱出不可能な密室に変わった」——。
2025年12月中旬、東京・赤坂の個室サウナ「サウナタイガー」で発生した火災により、30代の夫婦が逃げ遅れて死亡するという痛ましい事故が起きました。
報道で注目されているのは、現場のドアノブが「本来サウナには使わないタイプに付け替えられていた」という事実です。なぜそのような改装が行われたのか? なぜ「押せば開く」標準ドアにしなかったのか? その背景にある「デザイン優先・安全軽視」の実態をまとめました。
何が起きたのか(時系列と事故の状況)
まず、事故の異常性を整理します。
- 発生状況:サウナ室内のタオル等が何らかの原因で燃え、火災が発生。
- 脱出不能:室内の夫婦はドアを叩いたり、非常ボタンを押した形跡があったが、外に出られなかった。
- ドアノブの状態:
- 発見時、ドアノブ(取っ手)が内側・外側の両方とも外れて床に落ちていた。
- ノブが外れたことで、ドア内部の「ラッチ(留め金)」が引っ込んだまま戻らなくなり、ドアが開かない状態(ロックされた状態)になったと見られる。
- 非常ボタン:室内に設置されていたが、事務所側の受信機の電源が切られており(またはコンセントが抜かれており)、警報が届かなかった。
なぜ「ドアノブ」は付け替えられていたのか?
報道や専門家の見解を総合すると、この「死の改造」が行われた理由は、皮肉にも「高級感の演出」だった可能性が高いとされています。
1. 「金属ドア」を隠すための木製加工
本来、この施設のドアは防火扉のような「金属製」であったと報じられています。しかし、サウナ特有の「木の温かみ」や「高級プライベート空間」を演出するため、金属ドアの上から「木製の板」を貼り付ける改装が行われていました。
2. デザイン重視で選ばれた「L字型ノブ」
ドアの表面を木にしたことに合わせ、取っ手も既存の金属製から「木製のL字型ドアノブ」に付け替えられていました。
- 問題点:このL字ノブは、一般住宅の室内ドア(トイレやリビング)に使われるタイプで、高温多湿なサウナ環境での耐久性が考慮されていなかった可能性があります。
- 劣化:熱による木材の収縮・膨張や、内部金属の劣化により、ノブが軸から脱落しやすい状態になっていたと推測されます。
なぜ「標準のドア(押すだけ)」にしなかったのか?
ここが最も批判されている点であり、元プログラマーとして見ても「フェイルセーフ(失敗しても安全側に動く設計)」が完全に欠落しています。
サウナ標準は「ボールキャッチ式」
通常のサウナドアは、ノブを回す必要がない「押し引きタイプ」です。
- 仕組み:ドア枠に「ボール状の突起」があり、ドアを強く押すだけで開く。
- 理由:中で人が倒れたり、パニックになっても、体重をかければ必ず開くようにするため。また、ノブが壊れてもドア自体は開閉できます。
なぜ採用しなかったのか?
以下の2点が要因として考えられます。
- 防音・密閉性の重視:
「完全個室」を売りにするため、隙間ができやすいボールキャッチ式ではなく、しっかり閉まる(ラッチがかかる)L字ノブを選んだ可能性があります。 - 設計者の知識不足:
サウナ専門の施工業者ではなく、一般的な内装業者がデザイン優先で選定した場合、「サウナでラッチ式を使うと、閉じ込め事故になる」というリスク認識が甘かった可能性があります。
まとめ:これは「防げた人災」である
今回の事故は、偶発的な故障ではなく、設計と運用の段階で「安全装置」が二重三重に外されていたことが原因です。
- 設計ミス:高温環境で「外れる可能性があるノブ」を採用し、かつ「外れたら開かない構造」にした。
- 運用ミス:最後の命綱である「非常ボタン」の電源を切っていた。
亡くなられたご夫婦の無念はもちろんですが、全国の「個室サウナ」ブームに対して、安全基準の見直しを迫る極めて重大な事例となりました。
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