この記事のポイント
- 決済の空洞化:日本国内の取引なのに、資金が日本の銀行を経由せず、中国国内で完結する「オフショア決済」が拡大。
- 政府の危機感:片山財務相が「由々しき問題」と言及。法律上の登録義務や監督権限が及ばず、売上把握が困難に。
- 潜む「黒い」影:善良な店舗がいる一方で、白タクやマネーロンダリングへの悪用など、テクノロジーの悪用が表面化。
こんにちは、村上陽介です。
今、日本の繁華街――特に池袋などの「ガチ中華」エリアで、当たり前のように目にするようになった光景があります。それは、スマートフォンの画面に表示されたQRコードを読み取って決済する「アリペイ(Alipay)」や「ウィーチャットペイ(WeChat Pay)」です。
利用者にとって、また加盟店にとっても便利なこの仕組みですが、実は日本の金融システムにとって「想定外の脆弱性(脆弱性)」が露呈し、国会でも議論される事態となっています。
日本の金融システムを「スルー」する資金流動
問題の核心は、資金の流れが「日本の外」で完結してしまっていることです。
通常、私たちがPayPayやクレジットカードを使えば、その資金は日本の銀行口座や決済ネットワークを必ず経由します。しかし、中国系決済の一部では、日本国内での取引でありながら、支払いの送金も受け取りも「中国国内の銀行口座」で行われることがあります。
IT分野で例えるなら、「イントラネット(日本国内の金融網)の外側に構築されたプライベートなAPIで、勝手にトランザクションが回っている」ような状態です。外部(日本の当局)からは、その通信の中身も、どれだけの金額が動いたかも、全くログを辿ることができないのです。
「見えない売上」というバグ
これに警鐘を鳴らしたのが、片山財務相です。国会で「まさに由々しき問題」と述べ、国内の銀行口座を介さない決済に対して、法律上の登録義務や監督権限を及ぼすのが難しくなっている現状を認めました。
売上が把握できないということは、当然、適切な「納税」も行われないリスクがあるということです。多くの店舗は適切に申告していると信じたいですが、システム的に「隠せてしまう仕様」であることは否めません。
利便性の裏に潜む「白タク」とマネロンの影
さらに深刻なのが、違法行為への転用です。ITジャーナリストの三上洋氏が指摘するように、成田空港などで横行する「白タク(違法タクシー)」の決済にこれらが使われています。
中国国内の口座宛てに直接送金してしまえば、日本の警察や税務当局が証拠を掴むのは極めて困難です。これはマネーロンダリング(資金洗浄)の絶好の温床となり得ます。テクノロジーという便利なツールが、法規制の隙間を突く「攻撃手段」になってしまっているのです。
おわりに:国境を越える決済に「共通プロトコル」はあるか?
決済のデジタル化・グローバル化は、もはや止めることのできないストリームです。スマホ決済という便利なもの自体に罪はありません。
しかし、一国の金融システムが「把握できない経済活動」を抱え込むことは、国家のOSにルートキットを仕込まれるような危うさがあります。今、求められているのは、国境を飛び越えるテクノロジーに対して、いかに迅速に「法的な型定義(パッチ)」を適用できるか、というスピード感ではないでしょうか。
日本のキャッシュレス社会が、健全に、そして透明性を持って進化していくことを期待して止みません。

