「え、予約したはずの40万円近いフィギュアが届かないまま、メーカーが倒産?」…にわかには信じがたいニュースが駆け巡りました。一体、何が起きたのか気になりますよね。どうも、元新聞記者で、今はWebライターとして活動している近藤健太郎です。今回はフィギュアメーカー「CoolProps」の破産という衝撃的な事件について、その全貌を時系列で追いながら、背景にある根深い原因まで、少し引いた視点から分かりやすく分析してみたいと思います。
【悲報】フィギュアメーカーCoolPropsが破産…一体何があったのか?
まずは、この衝撃的な事件のあらましから見ていきましょう。多くのファンが熱狂した高クオリティな商品、その裏で一体何が進行していたのでしょうか。
届かないゴジラとウルトラマン、購入者から悲鳴
今回の破産で最も大きな影響を受けたのは、商品を心待ちにしていた購入者たちです。特に注目されていたのは、38万5000円の「ゴジラ」や30万円の「ウルトラマン」といった超高額な胸像スタチュー。これらは全額前払いで予約を受け付けていました。
しかし、商品は届かず。SNS上では「38万円の投資が水泡に帰した」「返金よりも、完成しているはずの商品だけでも配送してほしい」といった悲痛な声が溢れました。一生に一度の贅沢として購入した人々の夢と大金が、宙に浮いてしまったのです。
高クオリティで人気だったCoolPropsとは?
「CoolProps」という会社、ご存じない方もいるかもしれませんね。2012年に設立されたこのメーカーは、特に「エイリアン vs プレデター」といった映画のプロップレプリカ(小道具の精巧な複製)で名を馳せました。その圧倒的なクオリティは、世界中のコレクターから高い評価を受けていたんです。
近年では『シン・仮面ライダー』やドラマ『VIVANT』など、日本の著名な映像作品にも小道具を提供するなど、その技術力は折り紙付き。だからこそ、多くのファンが「このメーカーなら大丈夫」と信じ、高額な商品を予約した。この信頼が、結果として悲劇を大きくしてしまった側面は否めません。
【時系列】予約開始から破産手続開始までの流れ
では、事態はどのようにしてここまで進行したのでしょうか。時間をさかのぼって、ファンが熱狂したあの日から、絶望の通知が届くまでの一連の流れを整理してみましょう。ここに、今回の問題の本質が見え隠れしています。
期待の新作予約開始(2022年~)
物語は2022年、ゴジラやウルトラマンといった国民的キャラクターの胸像スタチューの予約が開始されたところから始まります。東宝や円谷プロダクションといった公式のライセンス元と共同開発し、公式ストアでも大々的に宣伝されました。ファンが安心して予約ボタンを押したのも、無理からぬことでした。
繰り返された発売延期と不穏な兆候
しかし、ここから歯車が狂い始めます。当初の発送予定は何度も延期。「新型コロナの影響で…」という説明が繰り返されました。この業界では納期遅延がある種の「暗黙の了解」となっている部分もあり、多くのファンは辛抱強く待っていました。ですが、問い合わせへの返信が滞るなど、今思えば不穏な兆候は確かにあったのです。
突然の「破産手続開始通知書」
そして2025年6月9日、事態は最悪の結末を迎えます。購入者の元に、東京地方裁判所から「破産手続開始通知書」が届き始めたのです。SNSで情報が一気に拡散し、「どういうことだ?」という混乱と怒りが広がりました。楽しみにしていた商品の到着を知らせるメールではなく、メーカーの終わりを告げる法的な書類が届く。これほど皮肉なことはありません。
CoolPropsはなぜ破産したのか?考えられる3つの原因
「経営努力が足りなかったからだ」…そう一言で片付けてしまうのは簡単です。しかし、元記者の視点から深掘りすると、そこには単なる一企業の失敗に留まらない、業界が抱える構造的な問題が見えてきます。考えられる3つの原因を分析していきましょう。
原因①:コロナ禍と海外工場の問題
第一に、やはり新型コロナウイルスの影響は無視できません。CoolPropsの製品の多くは、中国の工場に製造を委託していました。コロナ禍で中国の工場が閉鎖に追い込まれ、サプライチェーンが寸断。これにより、製品の製造が大幅に遅延し、資金繰りを直撃したと考えられます。
原因②:主力IPのライセンス失効
ちょっと待ってください、実はもっと根深い問題があります。それは、CoolPropsの屋台骨を支えていた「エイリアン」や「プレデター」といったIP(知的財産)のライセンス問題です。2019年にディズニーが権利元である20世紀フォックスを買収したことで、IP管理が世界的に厳格化されました。
結果として、CoolPropsは主要な収益源であったこれらの商品の再ライセンス取得に失敗したと見られています。これは、看板メニューを突然失ったレストランのようなもの。新たなヒット商品を生み出す前に、経営の土台そのものが揺らいでしまったのです。
原因③:高額商品ゆえの自転車操業リスク
そして最後の原因が、この業界特有のビジネスモデルの脆さです。スタチューのような高額商品は、購入者から代金を「前払い」で集め、その資金を元手に商品を開発・製造するケースが少なくありません。
まとめ:これは他人事ではない。高額予約商品の購入で私たちが注意すべきこと
さて、CoolPropsの破産劇を見てきましたが、これは決して対岸の火事ではありません。グローバルなIP管理の変化、海外依存のサプライチェーン、そして前払いという商慣習。これらの要因が複雑に絡み合った結果、一つの有望なメーカーが力尽きました。最後に、私たち消費者がこの事件から何を学ぶべきか考えてみましょう。
高額な予約商品を購入する際は、メーカーの過去の実績や評判だけでなく、SNSなどで経営に関する不穏な情報が出ていないか、少し踏み込んで調べてみる自衛策が必要な時代なのかもしれません。
好きだからこそ、信じる。その気持ちは非常に尊いものです。ですが、その愛情の対象がどのようなビジネスの土台の上にあるのか、その構造にも少しだけ目を向ける冷静さが、これからのファン活動には求められているのかもしれませんね。