「銀行の貸金庫は安全」と思っていませんか? しかし、2025年に発覚した三菱UFJ銀行やみずほ銀行の貸金庫盗難事件により、この「安全神話」が揺らいでいます。内部の人間による不正 や 管理体制の甘さ によって、貸金庫が狙われるケースが相次いでいるのです。
また、貸金庫で盗難が発生した場合、銀行は補償してくれるのか? という点も重要です。実際には、補償が受けられないケースが多い ことが分かっています。
本記事では、貸金庫の安全性と補償の実態、そして安全に利用するための対策 について詳しく解説します。貸金庫を利用している方、これから契約を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
銀行の貸金庫は本当に安全なのか?
貸金庫は、銀行が提供する安全な保管サービスとして広く利用されています。しかし、近年、銀行内部の人間が関与する貸金庫盗難事件が相次いでおり、その安全性に疑問が生じています。本当に貸金庫は安全なのか?これまでの事件を振り返りながら、その実態を見ていきます。
貸金庫の「安全神話」とその実態

「銀行の貸金庫は防犯対策がしっかりしており、盗難のリスクが低い」──これは多くの人が信じている「安全神話」です。特に、日本のメガバンクが提供する貸金庫は、高度なセキュリティ対策が施されているとされ、多くの人が貴重品を安心して預けています。
しかし、最近では銀行内部の人間が貸金庫を悪用するケースが増えており、この安全神話に疑問が投げかけられています。特に、貸金庫の鍵を管理する立場の行員が関与する事件が発生しており、外部の窃盗よりも防ぐのが難しい状況にあります。
では、実際にどのような事件が発生しているのでしょうか?次に、近年発生した貸金庫盗難事件の具体例を見ていきます。
過去に発生した貸金庫盗難事件の事例
ここ数年で、貸金庫の安全性を揺るがす重大な盗難事件が複数発生しています。特に、三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった大手銀行での事件は、社会に大きな衝撃を与えました。
三菱UFJ銀行の貸金庫盗難事件(2025年)
2025年1月、三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から顧客の金塊を盗んでいたことが発覚しました。被害総額は約17億円にのぼり、60人以上の顧客が影響を受けました。
この事件では、元行員が銀行が保管する予備鍵を不正に使用し、貸金庫を無断で開錠。その後、貸金庫システムを故障と偽装する手口で発覚を遅らせ、盗難を繰り返していたことが明らかになっています。
みずほ銀行の貸金庫盗難事件(2025年)
みずほ銀行では、2019年に発生した行員による貸金庫盗難事件が、2025年に再び注目される事態となりました。
被害額は数千万円規模とされているものの、銀行側は詳細な被害額や補償内容を公表していません。この事件を受け、みずほ銀行は貸金庫の新規契約を原則停止し、内部管理体制の見直しを進めています。
その他の銀行でも発生している貸金庫窃盗
貸金庫盗難は、三菱UFJ銀行やみずほ銀行だけの問題ではありません。地方銀行や信用組合でも、職員が貸金庫を不正に開錠する事件や、外部からの侵入による盗難が発生しています。
こうした事例を見ると、銀行の貸金庫は決して「絶対に安全」とは言えず、利用者自身もリスクを理解し、対策を考える必要があることがわかります。
貸金庫で盗難が起きた場合、補償は受けられるのか?
銀行の貸金庫は一般的に「安全」とされていますが、万が一盗難が発生した場合、銀行は補償してくれるのでしょうか? 貴重品を預けている利用者にとって、これは非常に重要なポイントです。
実際のところ、多くの銀行では貸金庫の中身に対する補償を明確に定めていないことが多く、被害者が全額の補償を受けられるケースは限られています。 ここでは、銀行の補償規約や、過去に補償されたケース・されなかったケースについて詳しく見ていきます。
銀行は貸金庫の中身を保証してくれるのか?
銀行の貸金庫を利用する際、多くの人が「盗難や災害が発生した場合、銀行が補償してくれる」と考えがちです。しかし、実際には補償が適用されないケースが多いのが現実です。
一般的な銀行の貸金庫契約のルール
銀行の貸金庫契約では、多くの場合、銀行は貸金庫内の貴重品の詳細を把握していないとされています。そのため、契約上、貸金庫の中身に対する補償義務を負わないという立場を取る銀行がほとんどです。
貸金庫の契約書には、「貸金庫の中に何を保管しているかは顧客の責任であり、銀行はその内容について関知しない」 という条項が含まれていることが一般的です。これにより、銀行側が「何が盗まれたのか」を証明できないため、補償が難しくなるケースが多くなります。
「自己責任」の原則が適用されることが多い
また、多くの銀行では、貸金庫の管理は行うものの、中身については利用者自身の管理責任としています。つまり、銀行は「貸金庫の中身に何が入っていたかを確認することができない」ため、盗難や災害が発生しても補償できないという論理です。
このため、銀行の貸金庫を利用する際は、万が一に備えて、補償規約をしっかり確認することが重要です。では、実際に補償が受けられたケースと、受けられなかったケースを見てみましょう。
補償されるケースとされないケース
貸金庫の盗難被害に遭った場合、銀行の対応はケースバイケースです。過去の事例を基に、どのような場合に補償が受けられるのかを整理します。
補償された実例(銀行側の過失が明確な場合)
✔ 三菱UFJ銀行の貸金庫盗難事件(2025年)
- 被害者への総額7億円の補償が実施される予定。
- ただし、被害総額(17億円)には満たないため、一部の顧客は全額の補償を受けられない可能性がある。
✔ 銀行側の管理ミスが認められたケース
- 貸金庫の鍵が銀行の管理不備により盗まれた場合、補償が認められることがある。
- 銀行が適切なセキュリティ対策を怠っていた場合、補償が実施されるケースもある。
補償されなかった実例(証拠が不足していた場合)
✖ みずほ銀行の貸金庫盗難事件(2019年)
- 銀行側が補償を行ったかどうか不明。
- 被害者への具体的な対応が公表されておらず、補償が受けられなかった可能性もある。
✖ 貸金庫の中身が証明できなかったケース
- 顧客が何を保管していたかを証明できない場合、補償が認められないことが多い。
- 契約上、貸金庫の中身は自己責任とされているため、被害届を出しても補償されないことが多い。
このように、銀行の貸金庫で盗難が発生した場合、補償を受けられるかどうかは銀行の管理体制や契約内容によるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
盗難発生時に補償を受けるための対策
貸金庫を利用する際には、万が一の盗難時に補償を受けやすくするための対策を講じることが重要です。
- 契約前に補償規約を確認する(銀行ごとに補償の有無が異なる)
- 貸金庫に保管する貴重品の証拠を残す(購入証明書や写真を保管する)
- 定期的に貸金庫の中身を確認し、不審な点がないかチェックする
- 必要に応じて貸金庫の中身に保険をかける(外部の保険会社を利用する方法もある)
こうした対策を取ることで、万が一盗難が発生した場合でも、補償を受けられる可能性を高めることができます。
貸金庫を安全に利用するための対策
銀行の貸金庫は、高いセキュリティを備えているとはいえ、内部関係者の不正 や 管理体制の不備 によって盗難事件が発生することがあります。では、貸金庫のリスクを最小限に抑えるためには、どのような対策が必要なのでしょうか?ここでは、安全な貸金庫の選び方や、貴重品を守るための具体的な対策について解説します。
安全な貸金庫を選ぶポイント
貸金庫を利用する際、どの銀行・サービスを選ぶか が重要になります。契約前にしっかりと以下のポイントを確認し、安全性の高い貸金庫を選びましょう。
貸金庫のセキュリティ対策を事前に確認する
貸金庫のセキュリティ対策は銀行ごとに異なります。以下のようなチェックポイントを確認することで、より安全性の高い貸金庫を選ぶことができます。
✔ 防犯カメラの設置状況(貸金庫エリアに監視カメラがあるか)
✔ 二重認証システムの導入(カードキーや指紋認証などの追加セキュリティ)
✔ 貸金庫エリアへの入室管理(本人確認が厳格に行われているか)
✔ 銀行側の鍵の管理体制(行員の不正を防ぐ仕組みが整っているか)
また、最近では デジタル貸金庫 など、より高度なセキュリティを備えたサービスも登場しています。これらの最新技術を活用するのも1つの選択肢です。
銀行ごとの補償規約を比較する
貸金庫の補償内容は銀行によって異なります。契約前に、盗難・火災・災害などの際に銀行がどこまで補償するのか を必ず確認しましょう。
✔ 補償がある銀行を選ぶ(全額補償・一部補償など)
✔ 補償の条件を把握する(証拠提出の必要性など)
✔ 補償の範囲を確認する(現金・貴金属・重要書類などの扱い)
銀行によっては、貸金庫内の貴重品に対して補償付きのオプションを用意している場合もあるため、必要に応じて活用するのも良いでしょう。
貸金庫以外の貴重品保管方法
貸金庫の安全性を確保するためには、銀行の貸金庫だけに頼らず、複数の保管手段を組み合わせることが重要 です。ここでは、貸金庫の代替手段について紹介します。
自宅の耐火金庫 + 防犯対策
貸金庫を利用できない場合や、すぐに取り出したい貴重品がある場合は、高性能な耐火金庫 を自宅に設置するのも有効です。
✔ 耐火・耐水性能のある金庫を選ぶ(火災・水害対策)
✔ 防犯対策を強化する(防犯カメラ・警備会社のセキュリティシステムと併用)
✔ 保管場所を分散させる(一箇所にまとめず、リスクを分散する)
ただし、自宅に貴重品を保管する場合は盗難リスクがあるため、セキュリティ対策を万全にする必要があります。
保険付きの貸金庫サービス(民間業者)
銀行の貸金庫以外にも、民間のセーフティボックスサービスを利用する方法があります。これらのサービスは、銀行よりも補償内容が手厚い場合があるため、補償を重視する場合に適しています。
✔ 補償付きの貸金庫を提供している業者を選ぶ
✔ 銀行の貸金庫よりも柔軟な契約が可能な場合がある
✔ 利用可能な地域を確認する(全国展開している業者も多い)
海外の貸金庫サービスの活用(スイスなど)
一部の人は、より高いプライバシー保護を求めて海外の貸金庫を利用することもあります。特に、スイスやシンガポールなどは、資産保護のための厳格な規制が整っているため、海外での貸金庫利用を検討する人もいます。
✔ 海外の貸金庫はプライバシー保護が強固
✔ 利用には一定の条件がある(居住地や契約条件の確認が必要)
✔ 為替リスクや渡航の手間を考慮する必要がある
ただし、海外の貸金庫を利用する場合は渡航費用や契約の手間なども考慮し、本当に必要か慎重に判断する必要があります。
まとめ:貸金庫の安全性と補償の現実
これまでの事例を通じて、銀行の貸金庫は「完全に安全」とは言えない ことが明らかになりました。三菱UFJ銀行やみずほ銀行で発生した盗難事件を見ても、銀行内部の人間が関与した犯罪は防ぎにくい という問題が浮き彫りになっています。
また、盗難が発生した際の補償はケースバイケース であり、契約内容によっては補償が受けられない 可能性もあります。ここでは、貸金庫の安全性と補償の現実を整理し、今後どのような対策を取るべきかを考えます。
貸金庫は「100%安全」ではない
銀行の貸金庫は一般的に高いセキュリティを備えているものの、以下のようなリスクがあることが分かりました。
✔ 内部の人間による不正(行員による貸金庫の不正開錠・盗難)
✔ 銀行の管理体制の甘さ(鍵の管理ミス、セキュリティの不備)
✔ 補償が不透明なケースが多い(銀行の規約によっては補償なし)
特に、「銀行の貸金庫なら絶対に安全」という思い込みは危険です。 実際に、複数のメガバンクで盗難事件が発生しており、管理体制の見直しが求められています。
安全に使うためにできること
貸金庫のリスクを最小限に抑えるためには、事前に対策を講じることが重要 です。
✔ 貸金庫の契約内容を確認し、補償の有無を把握する
✔ 銀行ごとのセキュリティ対策を比較し、安全性の高い貸金庫を選ぶ
✔ 貴重品の管理を分散し、貸金庫だけに頼らない(耐火金庫・民間セーフティボックスの併用)
✔ 貸金庫の利用履歴を定期的にチェックし、不審な点がないか確認する
📌 執筆者:近藤健太郎
ライター・元新聞記者。金融・事件報道に精通し、銀行や資産運用に関する記事を多数執筆。貸金庫の安全性や補償制度 について深く取材し、読者に分かりやすく解説します。