こんにちは、村上です。
2026年に入り、PCパーツ、特にSSDやDRAM(メモリ)の価格高騰に頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。AI需要の爆発的な増加による半導体不足の影響は、私たちの自作PCライフやストレージ環境に直撃しています。
そんな中、AmazonなどのECサイトで「市場価格の半額以下」で売られている大容量メモリやSSDを見かけ、ついクリックしてしまったことはありませんか?
「ちょっと待ってください。そのクリック、データ消失の入り口かもしれません」
現在、ネット上では「Amazonで買った激安メモリが偽物だった」「データが全部消えた」という報告が急増しています。これは単なる不良品ではなく、組織的な「容量偽装詐欺」である可能性が極めて高いです。
今回は、元プログラマーとしての視点から、なぜ2026年の今、こうした詐欺が横行しているのか、技術的にどのようなトリックが使われているのか、そして「デジタル資産を守るための鉄壁の自衛策」について、冷静に解説していきます。
何が起きているのか:2026年版メモリ詐欺の実態
まずは、現在進行形で発生しているトラブルの事例を整理しましょう。主に以下のようなケースがSNSやガジェット系フォーラムで報告されています。
- CASE 1:外付けSSDの容量詐称
「4TBで5,000円」など、相場の5分の1以下の価格で販売されている外付けSSDを購入。PCに繋ぐと確かに「4TB」と表示されるが、データを保存していくと数十GBを超えたあたりで古いデータから破損・消失していく。 - CASE 2:DDR5メモリのスペック偽装
最新のDDR5メモリとして購入したが、ヒートシンク(放熱板)を剥がしてみると、中身は廃棄寸前の古いチップや、全く異なる低スペックなチップが実装されていた。 - CASE 3:MicroSDカードの偽ブランド
有名メーカーのロゴが印刷されているが、印刷の質が粗く、転送速度を計測すると異常に遅い(Class 10のはずが数MB/sしか出ない)。
これらに共通しているのは、「PC上の表示は正常に見える」という点です。これが被害の発覚を遅らせ、返品期間(通常30日)を過ぎさせてから逃げ切るという、詐欺業者の手口を巧妙にさせている要因です。
技術的解説:なぜPCは騙されるのか?(容量偽装のカラクリ)
ここからは少し専門的な話をします。なぜ、PCのプロパティ画面には「2TB」と表示されているのに、実際にはデータを保存できないのでしょうか。
それは、ストレージデバイスの司令塔である「コントローラーチップ」のファームウェアが改ざんされているからです。
「目次」だけを書き換える手口
PCがUSBメモリやSSDの容量を認識する際、すべての記憶領域を実際にスキャンしているわけではありません。接続されたデバイス(コントローラー)が「私は2TBの容量を持っています」と自己申告すれば、WindowsやMacはその情報を信じて表示します。
詐欺業者は、実際には32GBや64GBしかない安価なチップを使い、コントローラーの設定だけを「2TB」や「16TB」と書き換えています。これはプログラマー視点で見れば、「本の中身は白紙なのに、目次だけ1000ページあるように書き換えている」状態です。
恐怖の「ループ録画」現象
最も恐ろしいのは、データがどのように扱われるかです。見せかけの容量を超えてデータを書き込もうとした時、多くの偽装ファームウェアは以下のどちらかの挙動を示します。
- 虚空への書き込み:
書き込み完了の通知だけ出して、実際にはデータ捨ててしまう。 - ループ上書き(Loop Recording):
これが最悪です。容量がいっぱいになると、先頭のアドレスに戻って古いデータを上書きし始めます。ユーザーは「保存できた」と思い込みますが、読み出そうとした時にはファイルが破損して開けなくなっています。
大切な家族の写真や仕事のバックアップをこの手のデバイスに保存した場合、気付いた時には全て手遅れになっているのです。
なぜ2026年の今、詐欺が増えているのか?
このような詐欺商品は以前から存在しましたが、2026年に入ってから特に被害が拡大している背景には、明確な経済的理由があります。
1. 半導体価格の高騰(AIバブルの影響)
2025年後半から続く生成AI・データセンター需要の爆発により、メモリメーカー(Samsung, SK Hynix, Micronなど)の生産ラインは、高利益なHBM(広帯域メモリ)やエンタープライズ向け製品に集中しています。
その結果、一般消費者向けのDRAMやNANDフラッシュの供給が絞られ、市場価格が高騰しました。人間は「正規価格が高い時ほど、安値への警戒心が薄れる」という心理的な隙を持っています。詐欺グループはそこを突き、「メーカー品が高くて買えない層」をターゲットに、廃棄チップを再利用した粗悪品や偽装品を大量投入しているのです。
2. Amazonマーケットプレイスの悪用
Amazonには、Amazon自身が販売する商品と、Amazon以外の業者が販売する「マーケットプレイス」の商品が混在しています。
詐欺業者は、審査の目をかいくぐり、短期間で大量に販売してアカウントを閉鎖し、別のアカウントで再出品するという「モグラ叩き」のような動きを繰り返しています。特に最近は、一見すると日本国内からの発送に見せかけたり、サクラレビューで★5を量産したりする手口が巧妙化しており、見分けるのが難しくなっています。
自衛はどうすればよい?元プログラマー推奨の対策
では、私たちはどうやって身を守ればよいのでしょうか。購入前と購入後、それぞれのフェーズでの対策をまとめます。
【購入前】怪しい商品をフィルタリングする
- 「販売元」を必ず確認する:
商品ページ右側の「出荷元」「販売元」を確認してください。ここが「Amazon.co.jp」であれば基本的には安心です。聞き馴染みのないアルファベットの羅列の業者や、住所が海外になっている場合は警戒が必要です。 - Keepaなどの価格履歴ツールを使う:
ブラウザ拡張機能「Keepa」などで価格推移を確認し、相場(1TBあたり〇〇円など)からあまりにもかけ離れた安値の商品は避けてください。魔法のような激安品は存在しません。 - ブランド名を確認する:
SanDisk、Samsung、KIOXIA、Crucial、Western Digitalなどの大手メーカー品を選びましょう。ただし、大手メーカーを騙る偽物もあるため、次の「購入後のチェック」が必須です。
【購入後】届いたらすぐに「検問」を行う
もし激安メモリや怪しいSSDを買ってしまった、あるいは正規の値段で買ったが不安だという場合は、データを入れる前に必ず以下のチェックを行ってください。
最強の真贋判定ツール「H2testw」
これは昔からあるフリーソフトですが、2026年の今でも「最も信頼できるリトマス試験紙」です。
H2testwの使い方(概要):
1. ドイツ語/英語のソフトですが、使い方は簡単です。「English」を選択。
2. 「Select target」で対象のドライブを選択。
3. 「Write + Verify」ボタンを押す。
このソフトは、ストレージの空き容量すべてに実際にデータを書き込み、正しく読み出せるかを検証します。もし容量偽装されていれば、途中でエラーが出て真っ赤な画面になります。数TBの大容量だと時間はかかりますが、寝ている間に回しておけば確実な証拠が得られます。
その他のチェックツール
- ValiDrive: H2testwよりも高速に、簡易的なスポットチェックを行う新しいツールです。短時間で「偽装の疑いあり」を判定してくれます。
- CrystalDiskInfo: SSDやHDDの健康状態を見るソフトですが、シリアルナンバーや使用回数を確認することで、「新品のはずなのに使用時間が数千時間になっている(中古の使い回し)」といった不正を見抜ける場合があります。
まとめ:知識こそが最強のアンチウイルス
メモリやSSDの技術は日々進化していますが、それを悪用する詐欺の手口もまた進化しています。特に2026年のように正規パーツの価格が高騰している時期は、詐欺業者にとっての「書き入れ時」でもあります。
「うまい話には裏がある」。
この古風な格言は、最先端のITデバイス選びにおいてこそ、真理をついています。もし、購入したメモリに違和感を覚えたら、すぐに使用を中止し、Amazonのカスタマーサービスに連絡してください。その際、H2testwなどの検証結果のスクリーンショットがあれば、返金対応もスムーズに進むはずです。
あなたの大切なデータを守れるのは、最終的にはセキュリティソフトではなく、あなた自身の「正しい知識」と「警戒心」です。賢く選んで、安全なPCライフを送りましょう。


