「街中のカメラが、あなたを見ている」——。
こう書くとSF映画のようですが、2025年、茨城県水戸市を含めたエリアで導入が進む「AI防犯カメラ」は、まさにそのSFを実現したシステムです。
しかし、不安になる必要はありません。このカメラが見ているのは、あなたの「顔」ではなく、あなたの「骨格(動き)」だからです。今回は、従来の防犯カメラと何が決定的に違うのか、技術的な裏側を解説します。
何が起きたのか(導入の背景)
茨城県や水戸市では、防犯対策の強化としてAI技術の活用を積極的に進めています。
- 導入の動き:2025年中盤より、水戸市などで防犯監視等のAIカメラ導入に関する業務委託や実証実験が進行。
- 目的:単なる「犯罪の記録」から、事件が起きる前の「予兆検知」へのシフト。
- 県内の事例:隣接する大洗町などでも、火災や異変を検知するAI監視システム(火の見櫓AIなど)が稼働しており、県全体で「ハイテク防犯」のモデルケースを作ろうとしています。
プロが解説:普通の防犯カメラと何が違うのか?
従来のカメラとAIカメラの違いは、「ドライブレコーダー」と「警備員」の違いに例えると分かりやすいでしょう。
1. 従来の防犯カメラ=「ただの記憶装置」
これまでのカメラは、映像をハードディスクに垂れ流して保存するだけでした。
- 弱点:事件が起きた「後」にしか役に立たない。「犯人はこの方向に逃げました」という証拠にはなりますが、犯行そのものは止められません。
- 人間の限界:24時間365日、人間がモニターを監視し続けることは不可能です。
2. AI防犯カメラ=「眠らない警備員」
今回導入されているAIカメラには、高性能なコンピューター(エッジAI)が内蔵されています。
- リアルタイム解析:映像をその場で解析し、「今、何が起きているか」を理解します。
- 予兆の検知:
- 「人がうずくまっている」(急病?)
- 「大声を出して暴れている」(ケンカ?)
- 「禁止エリアに入った」(侵入?)
- 即時通報:異常を検知した瞬間、警察や管理者にアラートを飛ばします。これにより「事件が深刻化する前に駆けつける」ことが可能になります。
「監視されている」は誤解?プライバシーの技術的配慮
「AIに見張られるのは怖い」という声もありますが、実は技術的にはAIカメラの方がプライバシー侵害のリスクが低いケースがあります。
「顔」ではなく「骨(ボーン)」を見る技術
最新の行動検知AIの多くは、顔の造作(誰であるか)ではなく、「姿勢推定(ポーズ・エスティメーション)」という技術を使います。
これは、画面に映った人間を「棒人間(スケルトン)」として認識する技術です。「関節がどう動いたか」「殴る動作をしたか」を棒人間の動きとして判定するため、AIにとって「あなたが誰であるか(個人特定)」は判断材料に含まれないことが多いのです。
※もちろん捜査段階では映像を確認しますが、常時監視しているのは「動きのデータ」だけという運用が一般的です。
まとめ:これは「守り」の進化
水戸市周辺で始まったこの取り組みは、単なる監視強化ではなく、「人手不足でも市民を守るための苦肉の策であり、最強の策」です。
- 普通のカメラは「過去」を記録する。
- AIカメラは「現在」を見て「未来」の被害を防ぐ。
今後、この「茨城モデル」が成功すれば、全国の自治体へ普及していくことは間違いないでしょう。

