「また芸人さんがギャンブルで…」そんなニュース、最近よく耳にしませんか?今回、吉本興業の芸人さん6人がオンラインカジノで書類送検されるという、ちょっとショッキングな出来事がありました。
「どうして芸人さんって、ギャンブルにハマりやすいんだろう?」そんな疑問を持った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、心理学を学んだ私、水野恵理が、芸人さんがギャンブル依存に陥りやすい背景にあるかもしれない「特殊な環境」や「心の動き」、そして「ギャンブル依存症」そのものの怖さについて、一緒に考えていきたいと思います。
他人事じゃない、この問題。少しでも理解を深めるきっかけになれば嬉しいです。
今回話題になった「芸人のオンラインカジノ問題」って?
まず、今回のニュースについて簡単におさらいしておきましょう。どんな芸人さんが関わっていて、どんな状況だったのかを知ることで、この問題の背景が見えてくるかもしれません。
どんな芸人さんが関わってたの?簡単に紹介
今回、オンラインカジノでの賭博容疑で名前があがったのは、吉本興業に所属する6名の芸人さんたちです。
- 吉本 大さん(ダイタク):双子コンビ「ダイタク」のお兄さん。しっかり者のイメージもあるけど、パチンコやボートレースが趣味とのこと。
- なかむら★しゅんさん(9番街レトロ):独特のゆるい雰囲気で人気上昇中のコンビ「9番街レトロ」のメンバー。趣味はギャンブル全般だとか…。
- 竜大さん(プリズンクイズチャンネル):コンビ名もインパクト大な「プリズンクイズチャンネル」。マンガやアニメが好きという一面も。
- 最強の庄田さん(プリズンクイズチャンネル):竜大さんの相方。釣りや車中泊、そしてギャンブルが趣味。
- 大原 優一さん(ダンビラムーチョ):ハイトーンボイスのボケが特徴的な「ダンビラムーチョ」。歌うま芸人としても知られていますよね。
- 笹本 はやてさん(ネイチャーバーガー):フリースタイルラップが得意な「ネイチャーバーガー」のメンバー。音楽好きで知られています。
皆さん、劇場やテレビで活躍されている方々ですよね。ファンにとっては、本当に驚きのニュースだったと思います。
「数千万円の借金」「依存症の自覚」報道内容をおさらい
報道によると、彼らはスマートフォンを使って海外のオンラインカジノサイトにアクセスし、賭けを行っていたようです。中には、数千万円単位のお金を賭けていた人や、多額の借金を抱えていた人、さらには自身でギャンブル依存症の自覚があった人もいるとのこと…。
最初は軽い気持ちだったのかもしれませんが、気づけば大きな問題になっていた、という状況がうかがえます。「グレーだと思っていた」という声もあるようですが、オンラインカジノは日本国内からの接続・賭博は明確に違法とされています。この認識の甘さも、問題を大きくした一因かもしれませんね。
【なぜ?】芸人さんがギャンブルにハマりやすい理由って?
では、どうして芸人さんという職業は、ギャンブルにのめり込みやすい傾向があるのでしょうか?もちろん個人差はありますが、彼らが置かれている「特殊な環境」が影響している可能性は考えられそうです。心理学的な視点も交えながら、考えられる理由をいくつか見ていきましょう。
理由1:不規則な生活と「魔の空き時間」
芸人さんの生活って、公演や収録の時間に合わせて動くので、すごく不規則になりがちですよね。深夜まで仕事があったり、逆に昼間ぽっかり時間が空いたり…。この「空き時間」、特に劇場での出番待ちなどの時間は、手持ち無沙汰になりやすいんです。
スマホひとつで簡単にアクセスできるオンラインカジノは、そんな「魔の空き時間」を埋めるのに、都合が良かったのかもしれません。ちょっとした暇つぶしのつもりが、気づけば…というのは、依存の入り口としてよくあるパターンなんです。
理由2:ストレス発散のはずが…?精神的なプレッシャー
「お笑い芸人」って、常に人前に立ち、笑いを届け、評価される仕事ですよね。人気が出れば嬉しい反面、「ウケなかったらどうしよう」「面白くないと思われたくない」といったプレッシャーは相当なものだと思います。ネタ作りの苦しみや、不安定な収入への不安もあるでしょう。
そんな強いストレスのはけ口として、ギャンブルのスリルや興奮に救いを求めてしまう…という心理も働くのかもしれません。最初はストレス解消だったはずが、いつの間にかギャンブルなしではいられなくなる。これも依存症によく見られるケースです。
理由3:「芸人仲間」との付き合いや環境の影響
芸人さんの世界って、先輩後輩の縦のつながりや、同期との横のつながりが強いイメージがありますよね。楽屋や飲み会などで、「みんなやってるから」「誘われたから断れなくて」といった理由でギャンブルに手を出してしまうケースも考えられます。
周りにギャンブルをする仲間が多いと、「自分も大丈夫だろう」とハードルが下がりやすいですし、やめたくてもやめにくい環境になってしまうことも…。仲間意識が強い世界だからこその、負の側面と言えるかもしれません。
理由4:一攫千金への夢?収入の不安定さ
芸人さんの収入って、売れっ子になれば大きいけれど、若手や中堅クラスだと不安定なことも多いですよね。アルバイトをしながら活動している人も少なくありません。
「一発当てて、生活を楽にしたい」「大きな賞レースで勝てなくても、ギャンブルで勝てば…」そんな風に、一攫千金を夢見てギャンブルにのめり込んでしまう可能性も否定できません。
特に、ギャンブルで一度大きな勝ちを経験してしまうと、「また勝てるかも」という期待感が忘れられず、負けが込んでもやめられなくなってしまうんです。
他人事じゃない!「ギャンブル依存症」のリアルな怖さ
「ギャンブル依存症」と聞くと、「意志が弱いだけでしょ?」と思ってしまう人もいるかもしれません。でも、これは大きな誤解なんです。依存症は、本人の意思だけではコントロールが難しくなる、脳の病気とも言われています。その怖さについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
「自分の意思じゃ止められない」依存症ってどんな状態?
ギャンブル依存症になると、脳の報酬系(快感を感じる部分)がギャンブルの刺激に過剰に反応するようになってしまうと考えられています。だから、「やめたい」と思っても、自分の意思だけではギャンブルへの強い衝動を抑えられなくなってしまうんです。
具体的には、以下のような状態が見られます。
- ギャンブルのことばかり考えてしまう(頭の中がギャンブルでいっぱいになる)
- 興奮を得るために賭け金が増えていく(より強い刺激を求めてしまう)
- やめようとしても、結局またやってしまう(自己制御が効かない)
- ギャンブルができないとイライラしたり落ち着かなくなる(禁断症状のようなもの)
まるで、ブレーキが壊れた車みたいですよね…。本人は「次こそやめる」「これで最後」と何度も思うのですが、その意志とは裏腹に行動が止められなくなってしまう、それが依存症の怖さなんです。
失うのはお金だけじゃない…家族や仕事への影響
ギャンブル依存症が進行すると、失うのはお金だけではありません。嘘をついてお金を借りたり、家族に隠れてギャンブルを続けたりすることで、大切な人との信頼関係が崩れてしまいます。借金問題が深刻化すれば、家族を巻き込んでしまうことも…。
また、仕事に集中できなくなったり、遅刻や欠勤が増えたりして、社会的信用を失うことにもつながりかねません。経済的な問題だけでなく、人間関係や社会生活全体が破綻してしまう危険性があるんです。本当に恐ろしいですよね。
もしかして…?身近な人が依存症かもしれないサイン
もし、あなたの周りにいる大切な人が、「もしかしてギャンブル依存症かも?」と感じたら、注意して見てほしいサインがいくつかあります。
もちろん、これらのサインがあるからといって、必ずしも依存症とは限りません。でも、「ちょっと心配だな」と感じたら、優しく声をかけてみたり、専門機関への相談を促してみることも考えてみてください。
ファンも心配…過去にギャンブルで苦しんだ芸人さんたち
実は、今回名前が挙がった芸人さんたち以外にも、過去にギャンブル問題で苦しんだ経験を持つ芸人さんは少なくありません。ファンとしては、彼らの才能がこんな形で失われてしまうのは本当に悲しいですよね…。
借金、謹慎…乗り越えた人、苦しみ続ける人
例えば、タレントの青木さやかさんは、過去にパチンコ依存で多額の借金を抱えた経験を告白されています。また、俳優の遠藤要さんは、海外カジノで巨額の損失と借金を抱えてしまったことが報じられました。フリーアナウンサーの徳光和夫さんも、過去に莫大な金額をギャンブルで失ったと語っています。
中には、依存症を克服し、その経験を語ることで注意喚起をしている方もいますが、一方で、なかなか抜け出せずに苦しみ続けている方もいるのが現実です。今回の件で名前が出た芸人さんたちも、これを機にしっかりと問題に向き合い、回復への道を歩んでほしいと願うばかりです。
もし悩んでいたら…相談できる場所や窓口はある?
もし、あなた自身や、あなたの周りの誰かがギャンブルの問題で悩んでいたら、絶対に一人で抱え込まないでください。ギャンブル依存症は、適切なサポートがあれば回復が可能な病気です。
一人で抱え込まないで!利用できる支援機関
日本には、ギャンブル依存症に関する相談窓口や支援機関がいくつもあります。
- ギャンブル依存症予防回復支援センター: 24時間365日、無料で専門家が相談に乗ってくれます。(電話:0120-683-705)
- 特定非営利活動法人ASK: 全国の精神保健福祉センターや自助グループの情報を提供しています。
- 消費者庁 ギャンブル等依存症に関する相談窓口: 借金問題の相談先や支援団体の情報があります。
- 依存症対策全国センター: 全国の専門医療機関を検索できます。
これらの機関では、本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。「相談するのは恥ずかしい」「迷惑かもしれない」なんて思わずに、勇気を出して連絡してみてください。専門家の力を借りることが、回復への第一歩になります。
まとめ:事件から考える、芸人さんとギャンブルの距離感
今回の芸人さんたちのオンラインカジノ問題は、改めて「芸人とギャンブル」、そして「ギャンブル依存症」について考えるきっかけになりましたね。華やかな世界の裏側にあるプレッシャーや特殊な環境が、彼らをギャンブルへと向かわせてしまう一因になっているのかもしれません。
でも、大切なのは、依存症は誰にでも起こりうる問題であり、意志の弱さだけが原因ではない、ということです。そして、もし悩んでいるなら、必ず助けを求めることができる、ということです。今回の事件を、単なるゴシップとして消費するのではなく、依存症への理解を深め、悩んでいる人に寄り添える社会について考える機会にできたら、と思います。
📌 水野 恵理|心理学専攻 / フリーライター
大学で心理学を学び、人の心の動きや行動に関心を持つ。現在はフリーライターとして、エンタメやライフスタイル系の記事を中心に、心理学的な視点を取り入れながら、読者に寄り添う記事を執筆中。